高調波対策|高調波流出電流計算の解説[簡略方法の解説]

今回の疑問

 

高調波流出計算を簡単にする方法はないの?

 

結論

建物用途が”ビル”の場合だと下記の条件を満たせば簡略化が可能!

  1. 高圧受電
  2. ビル
  3. 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
  4. 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし

 

 

本記事の内容

今回は、高調波流出電流計算方法について解説したいと思います。高調波計算を行いたいが手順がわからいない。計算結果が基準値を超えたが対策はできるのかなど、計算方法や手順が気になった方はぜひ最後までご覧ください。それではよろしくお願いします。

 

本記事のおすすめの方
  • 高調波流出電流計算を頼まれたがどうすればいいかわかない方
  • 基準値を超えた場合の対策方法を知りたい方など

高調波流出電流計算とは。

高調波流出電流計算は、高調波抑制対策技術指針(JEAG9702-2013)に基づいており、指針の目的である””電力系統に接続される機器を保護するため、高圧又は特別高圧で受電する需要家からの高調波電流流出を抑制する。””ための計算方法になります。

 

指針の適用範囲

  1. 新設の場合
  2. 既存の需要家であって、高調波発生機器を新設、増設又は更新する場合
  3. 既存の需要家であって、契約電力相当値又は受電電圧を更新する場合
    (減設による契約電力相当値の変更は除く)

 

高圧又は特別高圧で受電する需要家が対象となっています。

計算のフロー

計算のフローは、下記図(高調波抑制対策技術指針JEAG9702-2018)より制定されており、手順にそって計算を行い可否の判定を行います。

 

高調波流出電流計算のフロー

(1)高調波発生機器の抽出及び換算係数等の確認

  • 高調波発生機器の抽出
  • 機器毎の回路種別と換算係数の確認
空調機 高調波 室外機空調室外機負荷リスト

 

ポンプ 高調波ポンプ負荷リスト

 

 

主な高調波発生機器
  1. インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
  2. 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
  3. クレーン・巻上機
  4. 調光機器(調光盤があるもの)
  5. 工場用生産機器など

高調波の発生する機器は、製造業者がその旨を明記する必要があるため申請建物における高調波発生機器の抽出を行います。

 

空調機やエレベータから発生しているんだな

 

発生機器でも機器側で対策をしている場合が多いよ

機器単位で高調波抑制対策がなされている機器(JIS C 61000-3-2第3-2部電磁両立性高調波発生電流限度値1相あたりの入力電流が20A以下)については、適用範囲外となる

 

高調波発生機器であっても1相あたりの電流が20Aであれば対象外となります

(2)検討要否の判定

  1. 高圧受電
  2. ビル
  3. 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
  4. 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし

建物の条件および電気設備の仕様等が上記4項目を満足していれば、

高調波流出計算の検討終了となります。

高圧受電、ビル、コンデンサがリアクトル付の確認は図面にて確認が可能ですが、換算係数については機器のメーカー仕様を確認する必要があります。

 

 

それが難しいんだけどね…特にエレベーターやポンプがある場合は、要注意だよ。
エレベーター 高調波 計算エレベーター仕様書に記載されている内容

 

エレベータ 高調波エレベータ仕様書の特記内容

 

エレベーター仕様書の特記事項欄を確認すると高調波抑制リアクトル付と記載されているのが確認できると思います。このように仕様書に記載されている場合もありますので、仕様書を確認して対策の有無を確認しましょう。

 

 

換算係数について

換算係数は、高調波発生機器の回路種別に応じて定められています。高調波電流の発生量が多くなると係数が大きくなり、少ないと係数が小さくなります。

高調波発生機器の換算係数はメーカーに確認を行います。(抜粋)

高調波 パルス 換算係数回路種別毎の換算係数と高調波電流発生量(抜粋)

検討要否の4項目を確認しすべてに該当すれば、検討終了とすることができます。

  1. 高圧受電
  2. ビル
  3. 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
  4. 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし

検討結果の判定(判定内容により検討終了もしくは、次の検討に移ります)

 

 

等価容量の計算

  • 検討要否の項目に該当しない場合、等価容量を集計し限度値以下になるかの計算を行います。等価容量の計算式は下記になり前工程にて調べた機器ごとの換算係数と定格容量を掛け合わせて合計します。
  • 受電電圧が6.6kVであれば上限値は50[kVA]となり等価容量は50[kVA]以下となれば検討終了となります。

P0 =Σ( Ki × Pi)[ kVA ]

等価容量とは、高調波発生機器毎にその容量を三相ブリッジ6パルス変換装置(6相整流器)の回路構成容量に換算したものの総和をいう。 換算係数Kiとして、例えば12パルス変換装置は0.5倍、三相ブリッジ(コンデンサ平滑、リアクトル有り)は1.8倍など

Ki :換算係数、Pi :定格容量(kVA)、i :回路種別

 

第1ステップの判定に用いる限度値
受電電圧 限度値
6.6kV 50kVA
22/33kV 300kVA
66kV以上 2,000kVA

等価容量の計算手順

高調波発生機器の抽出

空調機、エレベーターなどの高調波発生機器を抽出し容量、台数、回路種別№等を入力します。

 

高調波流出電流計算(その1)抜粋(図1)
機器名称 製造業者 型式 相数 定格入力容量[kVA] 台数 定格入力容量(合計)Pi[kVA] 回路種別№ 換算係数Ki 等価容量Ki×Pi[kVA]
エレベーター 3 6.77 2 3.4 31 3.4 23.0
ビルマルチエアコン 3 13.1 6 78.6 33 1.8 141.5

 

 

機器ごとの換算係数は、メーカーに確認しよう!

P0 =Σ( Ki × Pi)[ kVA ]の計算式より表中の数値を合計した値が受電電圧ごとの上限値を超えていない場合高調波対策不要とし検討終了となります。

P0 =Σ( Ki × Pi)[ kVA ]

図1より

23.0+141.5=164.5[kVA]

「高圧受電かつ進相コンデンサが全て直列リアクトル付」の場合は、P0×0.9倍

164.5×0.9=148.05[kVA]

受電電圧6.6[kV]=限度値50[kVA]

等価容量>限度値

となるため、第2ステップの検討要否判定 [要]となります。

 

 

等価容量の集計

 

対策内容による係数

「高圧受電かつ進相コンデンサが全て直列リアクトル付」の場合は、P0 × 0.9倍が等価容量とすることができます。

 

リアクトル付のコンデンサであれば、”上限値>等価容量×0.9”になるよ。

 

僕の場合、容量×換算係数をして、、、53[kVA]!

 

リアクトル付コンデンサであれば0.9倍で収まるね!

 

上限値を超えた場合【STEP2】の検討に移るよ!

 

まとめ

 

高調波流出電流計算方法について[ステップ1]

計算対象の条件

  1. 新設の場合
  2. 既存の需要家であって、高調波発生機器を新設、増設又は更新する場合
  3. 既存の需要家であって、契約電力相当値又は受電電圧を更新する場合
    (減設による契約電力相当値の変更は除く)

高調波発生機器の抽出

  1. インバータ機器類(空調機、ポンプ、エレベータ、エスカレータなど)
  2. 医療機器(MRI、CT、X線装置など)
  3. クレーン・巻上機
  4. 調光機器(調光盤があるもの)
  5. 工場用生産機器など

検討要否の条件その1(最重要)

  1. 高圧受電
  2. ビル
  3. 進相コンデンサが全て直列リアクトル付
  4. 換算係数Ki=1.8を超過する機器なし

検討要否の条件その2

  • 上限値>等価容量となる場合

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