変圧器のスコット(T)結線とその使用例

変圧器のスコット(T)結線方式の原理についてその概要を紹介する。
第1図はスコット結線の方法を示す。単相変圧器2台によって
変圧器の一次巻線の中点Nと
変圧器の一端Oを結ぶ。
変圧器はOから全巻数の
(=0.866)の点にタップSを設ける。
変圧器の両端と
変圧器のタップSの口出線とに三相交流電源を接続する。二次側は
、
変圧器の起電力の同一極性点を共通点として、他端から導線を引き出して平衡二相交流を得るものである。
第2図は
、
変圧器の一次側、二次側の結線方法を示したものである。
、
変圧器の起電力の正方向を第2図のようにとれば、その電圧ベクトルは第3図のようになる。第3図で、
であり、第2図から
になる。また、
である。そしてその大きさは、
の電圧の大きさを
とすれば
は巻数が
であるからその起電力も
倍になる。よって、
、
の大きさは
となる。すなわち、対称三相交流電圧
、
、
を一次側に印加すれば
変圧器の一次側には
の起電力が発生し、二次側には同相で巻数比
に相当する二次起電力
が発生する。
変圧器には一次側に
の起電力を発生し、その位相は第3図の一次側に示すように
より位相が90°進む。二次起電力
はこれと同相で大きさは巻数比が
であるから
となり
と同じになる。よって第3図の二次側に示すように二相交流電源が得られる。
なお、電流に関しても前述の電圧に準じて計算することができるので、その過程は省略するが、二次側に負荷力率
の平衡二相交流電流
、
が流れれば、一次側も平衡三相交流電流
、
、
が流れる仕組みになっている。
変圧器のスコット(T)結線はその用途として代表的なものは、交流式電気鉄道であり、その他電気炉や最近は非常用予備発電装置の単相交流回路にしばしば使用されている。それらの例を簡単に紹介する。
(1) 交流式電気鉄道の変電設備の使用例
交流式電気鉄道は我が国では新幹線や比較的電化が遅れていた東北・北海道・北陸・九州地方などの在来線に採用されている。
交流式電気鉄道には単線式と複線式とがある。通常、き電回路は変電所に対してデッドセクションの左右に単線式の場合2回路、複線式の場合4回路が必要になり、これに対して三相交流で供給すると著しい不平衡をきたすおそれがある。したがって、変圧器のスコット(T)結線を使用して位相角が90°異なる単相交流に変成して変電所を境界にして単線式の場合は左右方面別に二つのき電回路、複線式の場合は上下・左右方面別に四つのき電回路に供給し、一次側(三相交流側)電流ほぼ均等にして三相交流電源への不平衡による影響を軽減している(第4図)。
三相交流電源系統から大容量の単相電力を使用すると、三相交流側に不平衡電圧を生じ三相負荷に逆相電流が流れて、特に誘導電動機はこの影響を受けやすく、過熱したり、正味発生トルクが減少したりする。したがって、三相交流電源側の電流はできる限り平衡させることが望ましく、交流式電気鉄道では電気設備技術基準第55条及び同基準解釈第260条に基づき、連続2時間の平均負荷で三相交流電圧不平衡率 が3%以下にするよう規定されている。
(2) 非常用予備発電装置の使用例
非常用予備発電装置の負荷は主として防災用負荷に供給される例が多いが、これらには三相負荷と単相負荷とがあり、後者に対して電源の三相交流電圧不平衡による影響を軽減するため第5図に示すように三相交流→二相交流に変換するためにスコット(T)結線変圧器がしばしば使用されている。






